ホテル内装を手掛ける際のポイント・注意点とは?費用まで解説!
更新日:2024.02.28
コロナ禍も落ち着いてきた昨今、羽を伸ばしに旅行に行きたいなと思うことありますよね。観光名所ももちろんですが、いつもと違った場所で寝泊りをするちょっとした特別感を味わえるのがホテルではないでしょうか?
近頃ではコロナ「ホカンス」という言葉ができたようにホテル滞在そのものを目的とした利用の形も出てきているほど。
日常で囲まれているものとは異なる非日常的な空間だからこそ、思い出に残る時間を過ごしたいとホテル選びに注力される方も最近では増えてきています。中でも客室はホテルの利用の中でも最も利用者が長く時間を過ごす場所であり、客室の内装デザインは特に重視されています。
この記事では、より魅力的な空間を作り、愛されるホテルをつくるために、内装のデザインのポイントや内装工事費用を解説いたします。
ホテル・民宿・民泊の違いについて
宿泊施設という点では同じ、ホテル・民宿・民泊ではありますが、それぞれに違いがあります。
一番想像しやすいのが施設規模の大きさではないでしょうか?
ホテルは15室以上の客室が必要とされている一方、民宿を筆頭とする簡易宿泊所では客室数に明記はありません。
また、一般的にホテルでは主要な客室は洋式になっており、シングルルームでは床面積が9㎡以上必要とされています。
簡易宿泊施設や民泊はフロントの設置義務がないほか、客室面積も1人当たり3.3㎡以上とこじんまりとした作りであっても問題がないのが特徴です。
規模の大きなホテルは民宿・民泊とは異なり、一度に集客率も見込めます。
母数が大きいからこそ、1人当たりの満足度も高められるような内装作りにしていきましょう!
ホテルの空間演出におけるポイント
一口にホテルの利用と言っても利用用途は多岐にわたります。
大人数での利用やファミリー層をターゲットとする場合では、開放的な内装にすることをお勧めします。
対して2人組での利用をターゲットとした場合「くつろぎ」を意識した落ち着いた空間を演出することが好まれます。加えて、インテリアもターゲット層に合わせることによって、作りが同じ部屋でも全く違った印象を持ってもらうこともできるでしょう。
以上のように用途の数だけホテルの理想とされる姿もあるのです。
そんなターゲットにあった理想とされる空間つくりのために大切にしておきたい4つのポイントを解説していきます。
コンセプトの実現
ホテルにおけるコンセプトは個々によって様々です。
立地やターゲット層によっても求められるコンセプトは変わってきます。
とはいえ、ロビー、客室、ホテルそのものがそれぞれの雰囲気がバラバラになっていると、統一感を演出することができず、コンセプトにそぐわない結果となりかねません。
ホテルの空間そのものを統一させることを意識し、ターゲットを明確にしたコンセプトを実現させることが集客や売り上げの向上のポイントとなってきます。
デザインと費用の優先順位
具体的なデザインのコンセプトを決める前にしておきたいのが、内装における投資予算額の設定です。
まず、ホテルの種類ごとに目安となる費用を見ていきましょう。
ラグジュアリーホテル 1坪当たり250~350万
シティホテル 1坪当たり 150~250万
ビジネスホテル 1坪当たり 50~150万
ホテルの種類によって必要な設備や施設の規模も異なっていることがわかると思います。
特にラグジュアリーホテルの場合、高級感を重視しているホテルということもあるため、これ以上のコストがかかってくる可能性も否めません。
次に、改装工事に焦点を当てて見ていきましょう。
客室の内装リフォーム 50~100万
バリアフリー設備の取り付け 50~2000万
希望の内容や対象の広さによって費用は変わるものの、壁を抜いて広くするなどのような大規模な模様替えでない限り、比較的費用を抑えた状態で改装工事を行うことができます。
そうはいっても、ビジネスホテルのような簡素な内装から、ラグジュアリーホテルのような高級感のある内装にしようとするとコストは大きくなってきます。また、客室以外のフロントなどの共有スペースや他施設を改装する場合、広さによってもかかってくる費用が異なるため注意が必要です。
バリアフリー設備の取り付けに関しては後述がありますので、そちらもご覧ください。
利用者に多くの時間を過ごしてもらう場所だからこそ、様々な設備の取り付けが求められるのがホテルです。加えて、理想を形にするためにいくらコンセプトが大事とは言え、コンセプトのデザインにとらわれてこだわり尽くしてしまったらキリがありません。
デザインにとことんこだわるか、費用面を重視するかの優先順位ははっきりさせておくと良いでしょう。
〈相見積もりリンク〉
ターゲットに適したデザイン
コンセプトと並行して考えていきたいのがターゲット層です。
例えば、10代20代をターゲットとした場合、いくらロビーがおしゃれでも客室がビジネスホテルのようなシンプルなつくりではがっかりしてしまいますよね。かといって内装にこだわりにこだわって、くつろげる空間であるホテルから快適さを失ってしまっては元も子もありません。
小さいお子さん連れのファミリー層をターゲットとした場合では、遊び心のあるインテリアや家族で座れるような大きなベッド、ソファーの設置が好まれるでしょう。また、小さなお子様連れの方の場合を考慮し、部屋にあまりものを置きすぎないこともポイントです。
2人組をターゲットとした落ち着いた印象を作り出したい場合には、窓辺に机とくつろげるような椅子を持ってきたり、和モダンをコンセプトにしているのであれば、畳をワンポイントで使うだけでもぐっと落ち着きのある空間を演出できます。また、高級感を持たせるデザインにすることによって大人旅の雰囲気を作り出しても良いかもしれません。
また、客室のデザインだけでなくホテルの設備自体もターゲットに焦点を当てることも良いでしょう。
ロビーに入った瞬間の高揚感から部屋を後にする際の満足感を意識したうえで、「帰りたくないな」「また来たいな」と思ってもらえるようにすることが大切です。
デザイン性だけでなくターゲットに合わせた利便性も併せ持つバランスを保てるように意識していきましょう。
非日常感の演出
ホテルに宿泊される方の多くは、ホテルという空間に喧騒を忘れられるような非日常感を求めています。もちろん求められているものはターゲット層によって異なります。
例えば、ビジネスマンをターゲットとして考えるのであれば利便性重視の内装が求められているでしょう。
しかし、コロナ禍を経た「ホカンス」の流行により、バカンス気分を味わえる雰囲気のホテルは今求められているところです。
そんな非日常感のある空間を演出するポイントとしては
・基調とする色の選択
・空間を演出する照明
・空間と什器の統一感
・窓から見える景観
を意識すると良いでしょう。
基調とする色の選択
どういったコンセプトを持つかによって選択すべき色は異なってきます。
和をモチーフとしたい場合にはモノトーンであったり、ニュアンスカラーを選択することで落ち着いた印象を持たせることができます。
逆に、ラグジュアリーホテルのような空間を演出したい場合には、白・グレーなどのベーシックカラーやダークレッドなどのシックな配色を選択することで、高級感のある大人な空間にすることができます。
色の選択に大切なのは「部屋自体の色」だけではありません。インテリアにおいても色の選択は大切になってきます。普段の生活ではなかなか取り入れることのできないインテリアがあることで一気に部屋は華やぎます。
しかし、ばらけた色でインテリアをかき集めても色彩の暴力に他なりません。部屋全体、ホテル全体を通し、統一感を持たせられるように選びましょう。
空間を演出する照明
日常でよく使われるような青白い光よりも、内装の雰囲気にあった温かみのある照明や明るすぎない照明を選ぶことで非日常感を出すことができます。
せっかく部屋のコンセプトカラーを落ち着いたものにしても、光が当たることによって乙着いた効果が半減してしまう場合もあります。選択した色と光との兼ね合いを考慮することも大切です。
また、間接照明の利用で陰影の立体感を作り出し、雰囲気を演出するのもおすすめです。
観葉植物などに間接照明を当てることで柔らかい光を生み出し、より一層落ち着いた印象をもたらすのも良いかもしれません。
空間と什器の統一感
素材を工夫して非日常を表現するのが良いでしょう。
色で統一感を持たせることに加え、使用する什器など同じ素材で統一してみましょう。高級感が生まれるほか、落ち着きを表現することができます。特にレザーは日常生活でなかなか見ない素材のため、高級感を持たせるにはうってつけの素材です。
また、什器を選ぶ際には、日常感を感じさせてしまうリモコンやコンセントコードなどは棚の中に隠すなどして空間にカモフラージュするようにしましょう。ごちゃごちゃとした印象を避け、日常から離れたよりすっきりとした空間になるはずです。
窓から見える景観
これはホテルの立地にも関わってくるところにはなりますが、いつもと違う景色というのはどんな人でも非日常感を感じざるを得ないもの。窓から見える景色をも空間演出に利用するのが有効的です。
例えば夜の景観に自信がある立地の場合、外が見えるように窓に目がつきやすい配置のレイアウトにして自然と窓に目が向くように視線の動線を図りましょう。そうすることによって部屋自体の空間を広く演出することにもつながります。
外の景色に合わせた部屋の色の選択も良いでしょう。
ホテルの内装費用の相場
坪単価で見た内装工事費用
ホテルを建設する地域によって坪単価は異なってくる傾向にありますが、一般に都心部になるほど坪単価が高くなる傾向にあります。また、構造別割合の6割を占めているのが鉄構造です。
都心の鉄構造のビジネスホテルを例に坪単価を出すと50~150万になっており、内装工事費用だけでも400~1200万とものによってはかなり高額な費用がかかります。
しかし、あくまでこの費用はビジネスホテルの場合であり、内装に凝った種類のホテル、場所、広さ、構造によりかかってくる費用はまちまちなため一概に「これだけの費用がかかる」と明言することは難しくなっています。
詳細な費用が気になる方は、専門の業者に見積もりを依頼することをお勧めします。
内装工事費用を少しでも安く抑える方法
こだわっていくとどうしても高額になってしまう内装工事費用。それでもできれば費用は抑えたいですよね。
ここでは内装工事費用を少しでも抑える方法についてご紹介いたします。
・居抜き物件を利用する
・客室を統一化する
・補助金や助成金を申請する
・相見積もりをとる
居抜き物件を利用する
費用削減で最も効果的なのが居抜き物件の活用です。
コロナを経て、営業不振となってしまった結果、廃業に追い込まれてしまったホテルも少なくはありません。そんなホテルなどが稀に居抜き物件として売り出していることもあります。
同業の建物であったことから、基本の設備なども大差ないため、設備を流用することでコスト削減につながります。内装や外装の改装で新しい姿として生まれ変わらせるのも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
例えば、居抜き物件を使用した水回りの工事ですと、バスルームやトイレの工事が挙げられます。
バスルームの場合、水道設備自体はそのまま使えることが多いため、1坪あたり100~150万が大体の相場です。ただ、浴室乾燥機やユニットバスなどのオプション機能を付けるかつけないかによっても金額はまた変わってきます。
トイレの工事の場合、客室1つあたり30~100万となっていますが、どの程度リフォームをするのかによっても価格は変動します。清潔感はホテルのためもちろん必要ではありますが、費用を抑えるといった面ではなるべく安価なもので全室設備を統一させることが好ましいです。
一方で、居抜き物件を使用する際のデメリットもあります。まず、元の形がある分、理想の内装レイアウトにすることが難しいこと。こだわりの部屋の作りにしたい希望がある場合には居抜き物件を使うことで大規模な改装費用など別途で金額がかさんでしまう場合があります。次に売り出されている場所によっては立地が限られてくること。
以上を踏まえたうえで、理想のホテルにあった選択をできるようにしましょう。
客室を統一化する
客室内の内装を統一することによって、材料費や工事費を抑え、作業自体の効率を良くすることが可能です。また、使用する資材を統一させていることによって一括で仕入れ、コストダウンを図ることが見込めます。また、使用する什器もなるべく安価なものを選ぶことで費用をまとめて抑えられます。什器であればレンタル・リースの契約も視野に入れることで初期費用を減らすことができるでしょう。
補助金や助成金を申請する
ホテルの開業にあたって使える補助金は
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
で調達することができます。
・IT導入補助金
IT導入補助金とは、業務効率化を目的としたITツールの導入を支援するための補助金です。ホテル宿泊業であれば、資本金5000万以下かつ従業員200人以下であることを条件に対象となります。
補助額は一人当たり最大450万が受けられ、補助率も2分の1から4分の3となっています。申請枠は大きく分けて3つ用意されており、各枠ごとに目的や要件が異なってくるため確認が必要です。
作業の効率化だけでなく、ゆくゆくの人件費の削減などにもつなげることができます。
参考:中小企業庁 IT導入補助金
・事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、売り上げが低下した企業を支援するために設けられた補助金です。
申請する際には、コロナ禍への対応として、新たな取組みを進める必要があります。
例として、ホテルの一部をコワーキングスペースとして改装する場合には、申請の条件に該当すると考えられるでしょう。
補助金額は従業員数によって異なり、従業員数が20人以下の場合は100万円から2000万円の支援を受けることができます。
参考:中小企業庁 事業再構築補助金
・小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者の販路開拓をサポートし、生産性の向上を支援するための補助金です。
ホテルなど宿泊業の場合は、常時使用する従業員数が20人以下であれば小規模事業者に該当します。
対象経費にはウェブサイト関連費や広報費などがあり、改装の費用も含まれています。
通常枠の場合、補助率は対象経費の3分の2となっており、最大で50万円の補助を受けることが可能です。
参考:日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金
相見積もりをとる
内装工事の際には、複数の業者から見積もりをとると良いでしょう。
1社のみに見積もりを依頼した場合は、適切な相場観を把握することが困難です。
複数の業者に見積もり依頼をすれば、見積書から相場観を掴みつつ比較検討することができます。
また、複数の業者とやり取りをすることによって、より自分の希望に近い提案をしてくれる会社を見つけられる可能性も高まるでしょう。
可能であれば2~3社程度から見積もりを取り、比較検討を行うことをおすすめします。
よくあるホテル内装の部分工事
ホテルの内装工事を検討している方の中には、開業を目的としているだけでなく、今あるホテルの経年劣化や利便性を追求した改装のほか、リデザインによるリフォームを考えられている方もいらっしゃるでしょう。
ここではそんな用途別に応じた目的ごとの費用について解説していきます。
経年劣化による内装工事の場合
老朽化の修繕のみを目的とした改修の場合目安としての金額は20坪分として大体1000万~2000万が見込まれます。
しかし、現在のホテルの状態、ホテルの立地、施工対象となる部分によって金額が変わってくるため注意が必要です。
バリアフリー化を目的とする内装工事の場合
バリアフリー化に関しても、どういった設備を取り付けるかによって費用に変動はあります。しかし、エレベーターの設置のような大掛かりな工事となるとそれなりに費用も大きくなってしまいます。ここで使っておきたいのが補助金制度である「宿泊施設バリアフリー化促進事業」です。
宿泊施設バリアフリー化促進事業
宿泊施設を対象とした、バリアフリー化のための改修工事経費の一部に出る補助金です。対象となる工事の例としては、共有部分の改修(手すりの取り付け、エレベーターの設置など)や、客室のユニバーサルルーム化を目的とする大規模改修工事などがあります。
上限金額が500万、補助率は2分の1となっています。
また、地域によっては、宿泊施設バリアフリー化促進事業以外にも補助金制度がある場合もあります。多くの人に寄り添ったホテルでバリアフリー化を検討される場合は、一度調べておくのも良いかもしれません。
ホテルの内装工事を行う際の注意点
スケジュールにゆとりを持つ
ホテルの改装工事には、工事内容によっては数ヶ月程度の期間を要します。
依頼する業者の選定や打ち合わせにも時間がかかるため、思い立ったらすぐに行えるというわけではありません。
改装工事を行う際には、スケジュールにゆとりを持った上で進めていきましょう。
早めに工事を終わらせたいという方は、デザインと工事を一括で行える業者に依頼することをおすすめします。
まとめ
「ホカンス」の普及により、時代とともに楽しまれ方の形も移り変わってきているホテル。
大切な時間を過ごしてもらえるホテルを作るには、デザインを重視した内装工事が重要です。
ホテル内装を手掛ける際にはビジネスホテルの場合にも少なくとも400万程度の費用がかかるとされています。
負担を軽減させるには、居抜き物件や補助金の利用を視野に入れることもポイントです。
また、ホテルの改装を依頼する業者が決まっていないという方は、内装広場までお気軽にお問い合わせください。
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